2017年09月29日
行政書士ダンディ法務事務所の大熊厚史

マンションの建て替えに成功するのは0.23%!?立ちはだかるハードルとは

行政書士ダンディ法務事務所の大熊厚史

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老朽化マンションの増加が社会問題化している。
周辺地域全体の資産価値が低下する他、災害発生時の被害拡大が懸念されるからだ。

一方で、マンションを建て替えるには高いハードルがあるという。マンション管理士の資格を持つ行政書士ダンディ法務事務所 大熊厚史代表にマンション建て替えの問題点について聞いた。(スマイスターMagaZine編集部)




マンション建て替えの問題点を説明する大熊氏 (撮影=スマイスターMagaZine編集部)


日本に初めての民間分譲マンションが建った1956年から約63年の月日が経ちました。月日の流れと共にコンクリートや配管が劣化し、老朽化が進み、安全性が確保できなくなったマンションは少なくありません。

では老朽化したマンションはどうするのでしょうか?
大きく4つの選択肢があります。
①「修繕」
②「建て替え」
③「事業者に売却」
④「放置して住む」
しかし、どの選択肢にも問題点があります。

選択肢①「修繕」の問題点とは何でしょうか。修繕して使い続けるというのは、最も現実的な選択に思えます。しかし、実際は多額の費用がかかるために、修繕積立金だけではまかなえず、住民から一時金の徴収が必要になります。その額は数百万円単位にものぼります。

結局「そんな金は払えない。今のままで良い」と考える住民からの同意を得ることができず、修繕を実現させるのは難しくなるのです。


また、選択肢②「建て替え」にも同様な問題があります。
国土交通省が発表した分譲マンションの建て替えの実施状況によると、2014年の時点で、建て替えが実施されたマンションは、たったの230棟です。
これは全国にあるマンションのわずか0.23%しかありません。全くといって良いほど、マンションの建て替えは行われていません。なぜなのでしょうか?

建て替えを反対した理由について住民が答えたデータがあります。一番多かったのは、予想通り「費用負担の問題」です。マンションの建て替えの負担金は、これまでの修繕積立金の額にもよりますが、60㎡のマンションで1,000万円~2,000万円程度かかります。住民たちは、住宅ローンに苦しんでいたり、貯蓄に余裕がなかったり、到底払える額ではありません。

二番目に多かった理由は、「引っ越しを伴うことや仮移転先に対する不満」です。こちらも深刻です。費用負担に加え、2回も引っ越さなければならないので、精神的負担が大きいのです。
特に高齢社会の日本では、建て替えが必要となるような老朽化したマンションの所有者は、大半が高齢者です。「余計な事はせずに、最期までこのまま住み続けたい」と思われる方が多いのも仕方がありません。


また、「現在の法制度では建て替えのハードルがあまりにも高すぎる」という問題があります。

区分所有法62条1には以下の規定があります。
区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる

簡単に言えば「建て替えの決議には5分の4以上の賛成が必要」ということです。100戸のマンションであれば、79戸が賛成しても21戸が反対なら建て替えられないのです。このハードルは高すぎます。

こういった状況ではマンション建て替えを実現させるのは、至難の技です。
しかし、もし大きな地震や災害が発生したら、老朽化したマンションは非常に危険なのです。この問題は増え続ける空き家問題と共に、政府が主導して解決しなければならない大きな問題です。



マンション建て替えの様子 (画像=写真AC)


では、そんな厳しい状況の中でも建て替えが成功したマンションとは、一体どんなマンションなのでしょうか?最近だと、東京都文京区の「本郷ハイツ」や東京都府中市の「府中セントラルハイツ」など建て替えに成功したマンションがあります。

その成功の鍵になったのが、「マンション建替え円滑化法」です。
先述のように、区分所有法の規定だけでは、建て替えが必ずしもスムーズに行われないのが実態です。そこで、区分所有法上の建て替え決議が成立した後、建て替えの実務及びマンション・敷地の売却をよりスムーズに行えるようにする意図で、この法律が制定されました。どういうことでしょうか。

この法律により、建て替え決議がなされた場合には、建て替え合意者は、4分の3以上の同意により、5人以上の参加者があれば、定款・事業計画書を定めて、都道府県県知事等の認可により建て替え組合を設立できるようになりました。法人格を持った組合ができるのです。多くの事項が組合員の多数決で決まるようになりました。また、金融機関からの融資や工事請負契約等の締結がスムーズになりました。

さらに、2014年に2つの大幅な改正がありました。
Aマンション敷地売却制度の創設
B容積率の緩和の特例を認める
です。


Aにより、改正前までは区分所有者全員の賛成がなければ老朽化マンションを一括で売却できなかったのが、区分所有者の5分の4の賛成で売却することが可能になりました。

これにより、選択肢③「事業者に売却」の実現可能性が上がりました。事業者はそのマンションと土地を買い取り、新たにマンションやオフィスビルを建設します。住民は売却益をシェアすることができます。

ただしこれは、事業者にとって購入するメリットがある、つまり「立地が良い」ことや「交通の便が良い」といった価値があるマンションのみ成立します。事業メリットがゼロのマンションを購入してくれる事業者はいません。しすて、そういった条件に合うマンションは残念ながら非常に少ないのが現実です。

Bの容積率の緩和も重要です。何故なら建て替えに成功したマンションの多くは、「容積率が余っているマンション」だからです。
つまり、建て替えた時に、現状より大きなマンションを建てることができるようになったのです。

建て替えによって、以前より住戸数を増やし、その増えた住戸を販売した収益を建て替えの費用に充当することができるのです。
実際に建て替えに成功したマンションの多くは、容積率に余裕のあるマンションであり、住民の負担はゼロでした。

しかし、このような容積率が余っているマンションは、極少数であり、ほとんどのマンションはその条件に該当しません。

では、多くのマンション住民は、選択肢④「放置して住む」という最悪の選択肢を選ばなければいけないのでしょうか。

今の法制度が続く限り、マンションの「スラム化」「廃墟化」への道は避けられません。先述した通り、それにはマンション管理組合の動きを鈍化させる、現在のルールがあります。例えば、現状の5分の4以上の賛成を要件にするのではなく、5分の3以上程度の賛成で、建て替えの決議が通るようにする、といった法改正を、政府が主導して行うべきだと考えます。


また、マンションの建物の寿命は管理によって変わります。マンションの劣化状況はそれぞれ異なるので、定期的なメンテナンスを怠らずに、またマンション管理士のような専門家にチェックを依頼して、できるだけ維持管理に細心の注意を払っていくことが何より大切です。

結局、自分の住んでいるマンションを守るのは、そのマンションに住んでいる住民の一人ひとりの心掛けしかありません。

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