2017年05月24日
行政書士ダンディ法務事務所の大熊厚史

守れないよ!マンション管理規約に溢れるトンデモルール

行政書士ダンディ法務事務所の大熊厚史

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マンションの管理規約は、マンション価値の保全や住民の安全のために作られたものである。しかし、なかには住民自身が困惑してしまうようなルールを設けているマンションもあるらしい。マンションの管理に詳しい行政書士ダンディ法務事務所の大熊厚史代表に当世の管理規約事情について聞いてみると、あるわ、あるわ、噴飯物の禁止事項たちが。(スマイスターMagaZine)




(マンションのトンデモルールに悩む大熊氏)



 マンションには絶対のルールが存在します。それが「管理規約」です。マンションの住民はこのルールを守ることが義務付けられています。

 何故「管理規約」は必要なのでしょうか。それは、考え方や価値観、ライフスタイルが異なる住民が生活しているマンションで、誰もが快適な住生活を送り、建物とコミュニティを健全に維持する為です。
管理規約はそのマンションの住民、つまり「マンション管理組合」が新しくルールを設けることができます。そして、その中には「なんじゃこりゃ?」と松田優作が絶叫しそうなトンデモルールが制定されることもあります。



マンションに存在するトンデモルール



■「ペットをエレベーターに乗せるときは必ず抱っこしなければならない」


 ペット可の分譲マンションで定められたルールです。
 このルールができた背景には、ペットの汚物でエレベーターが汚されていることが多かったことがあります。すべてのペットが、厳しく躾をされているわけではありません。住民の中にはペットを溺愛し、過保護に育て、ペットの後始末も無視する住人がいたようです。どうやら、規約が制定された背景には、合理的な理由があったようです。
 しかし規約が施行されたあとになって、いろいろと問題が出てきました。ペットの中に「抱っこ」が大嫌いなワンちゃんがいて、飼い主が抱こうとしても大暴れし、運が悪ければ噛まれてしまうことがあったそうです。
飼い主は「抱っこが嫌いな犬を抱っこする、良い方法があったら、是非とも教てください!!」なんとも悲痛な叫びをあげていました。
マナーを守らない人のおかげで、新しいルールが誕生し、そのルールによって迷惑を受けている住民もいるのです。



■「マンションの玄関のドアは開けっ放し厳禁。10㎝でも開けておく事は禁止する」
 
 このルールが出来た詳しい経緯については不明ですが、どうやら消防法等を根拠に神経質な人間が制定したようです。
 このルールも施行されたあとに問題が明らかになりました。エアコンを使用するのが嫌いな住民が、このルールにより玄関を開けておくことができなくなってしまいました。今までは窓と玄関のドアを開けて風を通して生活していたのに。エアコンが苦手な人にとっては、とてもつらいことです。
1つのルールが生まれると、それにより快適に生活出来る人もいれば、不便になる人もいます。あまり神経質な運用は窮屈さを生んでしまうものです。



■「マンション内での住民間での挨拶を禁止する」
 
 去年、神戸新聞に掲載された投書です。全国的に大きな波紋を呼んだルールです。
 このルールができた背景には、マンションに住んでいる子供の安全の確保がありました。「知らない人に挨拶されたら逃げるように教えているので、マンション内でも挨拶をしないようにしてください」小学生の子供を持つ親が提案したようです。
この提案には、総会に出席していた年配の住民も賛同しました。以前、住民に挨拶をしても返事がなかったようで、「それならば、お互いにやめましょう」と意見が一致し、最終的に「挨拶禁止」のルールが明文化されることになりました。

 この投書はツイッターなどのSNSで拡散し、大きな注目を集めることになりました。様々な意見が飛び交い、やはり挨拶禁止に反対する意見が続出しました。

「挨拶をすることでトラブルが減ると思う」
「将来的にも困るし、逆に誰が近隣住民なのか分からない方が困る」
「挨拶をしないことがどう防犯に繋がるか理解出来ない」
「挨拶をしないことによって、失うものはたくさんある」
「単純に寂しい。日本は変わってしまった」等々。

 その一方で、少数派ではありましたが挨拶を避けたい住民の心情に理解を示す声もありました。
「近所と関わりの無い生活をしたい人だっている」
「マンションは他人の集合体だから、この警戒も理解出来る」
「挨拶を教える機会は親戚付き合いや学校等、ある程度安全な環境で設ければ良い」等々。

 2012年に、京阪電鉄不動産が、首都圏在住の30~40代のマンション住まいの人に「マンションのコミュニケーションに関する意識調査」を行いました。「近所の方とすれ違う時に挨拶を交わしますか」という質問に対して、「毎回挨拶をする」と答えた人は22.0%に留まりました。つまり、ほとんどの住民が挨拶をしない現実があるのです。

 自分の隣の部屋の住人すらどんな人物なのか全く分からない、人と人との繋がりが薄れている現代だからこそ誕生した、トンデモルールといえるでしょう。ルールとはその時代を反映しているのです。
 筆者としては「何も禁止までしなくても…」という人が多数派であってほしいのですが。



(画像=写真ACより)



マンションのトンデモルールは減少傾向?


 こういったトンデモルールは現在、減少傾向にあります。今から35年より以前はマンションごとに、もっと多くのトンデモルールがたくさんありました。何故なら「管理規約の見本」が存在しなかったからです。そのため、癖の強い独特なルールが誕生していました。

 しかし昭和57年に、現在の国土交通省(当時の建設省)が「マンション標準管理規約」を作成し、公表しました。それ以降、この「マンション標準管理規約」は時代背景に沿って必要なたびに改正され続け、「管理規約」を定める際の、頼れる見本として立派に機能しています。最新のマンションの多くは、「マンション標準管理規約」をそのまま「管理規約」に準拠しています。
 今後もトンデモルールは減少していくと思います。

 マンションの管理規約に限りませんが、ルールは制約を生みます。制約があるから、誰もが快適に過ごせる一方で、あまり窮屈になりすぎると今度は息苦しくなる。この間で常に揺れ動くものがルールであり、民主主義の基礎です。
しかしトンデモルールが生まれ、注目される要因の多くは不寛容から始まっているようにも感じます。
「『エレベーター内では、ペットは抱っこ』がルールですが、嫌がる場合は大目に見よう」という寛容の精神があれば、もっとストレスなく過ごせるのではないかと思うこともしばしばあります。寛容の精神は、民主主義が生まれる前からある、生きるための知恵であるからです。

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