2017年07月28日
明海大学不動産学部

アクティブラーニングで学ぶ不動産学 建物の古さに何をイメージするのか

明海大学不動産学部

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はじめまして、明海大学不動産学部の小松広明です。

ゼミでは、不動産マーケティング技法について講義を行っています。

ここでは、当該ゼミの取り組みをご紹介します。今回は、学生にとって身近な住宅市場を対象として、当該資産価値の経年減価をテーマに取り上げています。なお、詳細は、明海大学不動産学部『明海フロンティア』をご覧ください。


はじめに


日本では、建物の価格は、時の経過とともに減価します。なぜでしょうか?一般には、経年減価の要因としては、①物理的要因、②機能的要因、③経済的要因の大きく3つがあげられます。①物理的要因とは、老朽化の程度を示します。建物を使用することによる摩滅や破損などを含みます。②機能的要因とは、時代遅れの程度を示します。新築物件との設備等の比較によるものです。③経済的要因とは、市場性の減退の程度を示します。周辺環境とのミスマッチ(場違い建築)の程度などが含まれます。


ここでは、人の意識の中で、当該経年減価の要因がどのように関連付けられているのかを、アクティブラーニング(学生の能動的学習)を通じて解き明かします。その目的は、人の意識が行動の予兆を表すものと捉えて、今後の住宅価格の予測に生かすことにあります。そもそも、不動産学では、国土における健全な資産形成をはかることを目的としています。


マンション価格の経年に伴う減価の程度


東京都特別区において成約したマンション取引価格(国土交通省「不動産取引価格情報」平成27年第3四半期(7月~9月))をもとに行った統計分析の結果を示します(図1)。


マンション価格が建築経過年数に伴って低下している傾向が見て取れます。当該低下傾向は、専有面積別にみると、25㎡未満の住戸が最も大きくなっています。また、築10年と築25年のそれぞれにおいて、マンション価格の建築経過年数に対する低下の程度が変化しています。つまり、マンション価格は建築経過年数に対して一律に変化するものではなく、当該住戸に対する需給状況を反映して価格変化の過程に相違がみられます。例えば、マンション価格(物件属性の相違を調整した後の価格)は、65㎡以上のファミリータイプでは築30年で新築時(100)の半額程度(49.1)になり、25㎡未満のシングルタイプの価格においては、同築年数で新築時の3分の1程度(34.4)と推計されます。


建物が古くなることに対して、居住者の意識にはどのような要因が作用しているのでしょうか。次節では、単身世帯を含む20代の学生を対象として、住宅の経年減価に対する意識の構造を捉えたいと思います。



図1 東京都特別区におけるマンションの専有面積別にみた経年減価の推移

注)国土交通省 土地・建設産業局 不動産市場整備課 土地総合情報ライブラリー「不動産取引価格情報」を用いたヘドニック分析の結果



建物の古さに想起される要因

 

小松ゼミに属する不動産学部3年生の12名を対象に、ブレーンストーミングやKJ法を用いて、建物が古いことに対してどのような要因が想起されるのかを探ってみました(図2)。結果は、以下のとおりです。


建物の劣化に対する認識として5つの要因が抽出されています(図3)。具体的には、①居住の快適性、②居住性の安全性、③居住の衛生性、④居住環境との整合性、⑤建物の美観性の5つです。当該要因には『建物への不安』が大きく関係しています。注目すべき点は、中古住宅に対する信頼できる情報の不足が、住宅の質に対する不安を意識上惹起していることが示されていることです。


この点について、例えば、米国では、MLS(Multiple Listing Service)によって物件の成約取引価格情報等が公開されており、一般の消費者にとって透明性の高い市場が形成されています。一方、日本では「住宅ファイル制度」が進められています。具体的には、宅地建物取引士の重要事項説明書の内容、建築士の建物検査結果、防蟻業者のシロアリ調査結果、不動産鑑定士による時価評価が調査報告書として情報を一つにまとめて提供する取組がなされています。建物価値が市場で認識されるようにする仕組みづくりが進められているのです。このように、信頼できる専門家の情報を消費者に提供し、中古住宅に対する不安を払拭する具体的な取り組みが始められています。


こうした社会的背景を念頭に置き、学生たちが議論を重ねながら作成した要因連関図(図3)をみると、既存住宅に関する情報提供の重要性と当該住宅に対する不安の解消の関係が的確に表現されていることがわかります。




図2 建物の経年減価要因について議論する学生




図3 建物の建築許容経過年数に影響を与える要因連関図(20代学生の意見)



おわりに


減価要因が居住者の心理中にどのように組織化されているのか、東京都特別区の賃貸マンションに居住する単身世帯1,000人に行ったアンケート調査(平成26年3月実施)をもとに、統計分析(共分散構造分析)を行った結果を最後にご紹介します(図4及び図5)。


建物の許容経過年数(図中ハッチング)に対する認識に対しては、「物理的減価懸念」、「機能的減価懸念」、「経済的減価懸念」、「入居者への不安」の4つの要因(図中の楕円)が関連しながら影響を与えていることがわかります。つまり、建物の古さに対する認識は、要因のそれぞれが独立して作用するものではなく、重畳的に関連付けられて形成されています(図中の→は因果関係を示す)。このことが、中古住宅の価格に対する減価懸念の払拭をより複雑なものにしています。また、男女の意識構造を比較してみると、例えば、女性においては、「入居者への不安」の「経済的減価懸念」に与える影響度(0.453)が、男性(0.364)に比べて相対的に高いことがわかります。つまり、女性は、土地建物一体としての不動産に加え、そこに住まう人の属性を強く考慮する傾向にあると考えられます。このように、建物の古さに対する認識に男性と女性の相違が認められます。


こうした居住者の意識が、今後の行動の予兆を表していると捉えるならば、リフォームやリノベーションを行うことによって、経年減価に対する懸念を一つ一つ払拭していくことが、中古住宅としての資産価値を維持・向上させるうえで重要となりそうです。



図4 建物の経年減価要因に関する意識構造(男性)

CFI=0.913, RMSEA=0.081

***p<0.01,**p<0.05,*p<0.1を示す。





図5 建物の経年減価要因に関する意識構造(女性)

CFI=0.910, RMSEA=0.081

***p<0.01,**p<0.05,*p<0.1を示す。




明海大学不動産学部3年生 小松ゼミの学生たち(2017年4月時点)


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最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。
もしよろしければ、不動産学部のホームページもぜひご覧下さい!
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