2017年06月17日
橋本 秋人

21世紀の輸出産業。日の丸ハウスメーカー、海外進出の真実

橋本 秋人

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ハウスメーカーによる海外進出が活発化している。大和ハウスが、米国における賃貸住宅を2.5倍の5,000戸に増やす計画を発表するなど、各社が積極的な進出計画を進めている。日本の高い住宅技術が、海外でも受け入れられているとすれば喜ばしいが、一方で「日本国内市場に見切りをつけた」とのドライな見方もある。海外の不動産事情に詳しいFPオフィス ノーサイド 橋本秋人代表に聞いた(スマイスターMagaZine編集部)。




積水ハウスが開発したワン・セントラル シドニー(撮影=橋本氏)



住宅メーカーの海外進出が目白押し


最近、住宅メーカーの海外進出の記事がよく目にとまります。

冒頭の大和ハウスの記事以外にも、

■積水ハウス

・米国ワシントンの米連邦住宅抵当公社本部を取得し再開発(2016/12/1日経、以下同)

・米国の住宅販売会社を533億円で買収(2017/2/22)

・豪でゴルフコース付き住宅販売(2017/5/18)

・今後3年で海外事業に1兆円を投資(2017/6/9)

■住友林業

・豪で2社目の住宅販売会社を買収。今期米豪で年8千戸の供給を目指す(2016/7/29)

・海外企業のM&Aで住友林業が注目を集める(2017/6/8)

■パナホーム

・パナソニック専務が「パナホームとはリフォームと海外事業を中心に」(2016/12/20)

■北陸ミサワホーム

・今後ベトナム現地法人の事業拡大。将来はベトナム関連の売上を3割に(2017/4/20)


など、多くの住宅メーカーの海外展開について伝えています。



住宅メーカーの海外進出は意外に早かった


実は住宅メーカーの海外進出は、最近始まったことではありません。

大和ハウスは既に1970年代にはブラジルで勤労者用住宅2万戸を建設した実績があり、アメリカでも現地法人を設立し分譲住宅供給を開始しています。

積水ハウスも1975年に西ドイツ(現ドイツ)に現地法人を設立しています。

つまりいくつかの住宅メーカーは40年以上も前から海外で事業を行っていたのです。

しかし、当時住宅メーカーの事業の核はまだまだ成長が見込めた国内の戸建て住宅であり、海外事業はプラスアルファにしか過ぎませんでした。また海外進出といっても1980年代までは、その多くが継続性のない単発の事業や小規模の事業でした。



今海外に進出する理由


しかし、最近の住宅メーカーの海外事業は、以前とは様相が変わりました。明確に国内の戸建て事業から軸足を移し、1つのセグメントとして一定の地位を確保しようとしています。

例えば、住友林業は2018年3月期に米豪で8,800戸の住宅販売を計画しています。これは国内での販売計画7,700戸を上回る数字です。

積水ハウスも、3年後2020年1月期の海外事業の売上について、2017年1月期の2倍以上の4,000億円を目指しています。これは同社の総売上の約17%を占めることになります。


それでは、なぜ住宅メーカーがこのように積極的に海外事業を展開しているのでしょうか。

最も大きな理由は、当然ながら国内の住宅着工戸数の減少にあります。

国内の住宅着工戸数は、直近のピークである1996年の163万戸から減少に転じ、2016年には96.7万戸と4割以上も減少しました。少子高齢化により今後も減少は続き、野村総研では13年後の2030年に着工戸数は54万戸と、ピーク時の3分の1にまで減少すると予測しています。


そのため、住宅メーカーも戸建て住宅市場の縮小を補うための新しい市場が必要になります。海外には、人口増加と併せて人口ボーナス(労働人口増加率が人口増加率を上回る状態のこと)という大きな魅力があります。  

また、日本の住宅メーカーには様々な住宅技術の蓄積があり、そのノウハウを海外の住宅にも活かせるであろうという思惑もあります。

実際に各社の動きを見ると、2000年代には本格的に海外展開を見据えた体制を構築し始めています。

積水ハウスが国際事業部を新設したのは9年前の2008年です。先ずオーストラリアへの本格的進出を開始しています。

海外展開に特に積極的な大和ハウスは1980年代後半から中国での事業を積極的に進め、2010年代に入るとベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアなどに相次いで駐在事務所を開設しています。




住友林業が買収したウィズダムグループのモデルハウス シドニー郊外(撮影=橋本氏)



日本の住宅メーカーは海外で受け入れられているのか


しかし企業別に見てみると、今までの海外進出が全て成功してきた訳ではありません。

かつて米国、台湾で住宅事業を手掛けていたミサワホームは撤退しています。積水ハウスも中国事業で失敗した経験があります。前述のドイツ現地法人も2005年には解散しています。

筆者が今年オーストラリアで見聞したところでは、全体としては成功している積水ハウスも、現地での戸建て住宅の受注に苦戦したため、現在では宅地開発に事業をシフトしています。


確かに日本の住宅技術はたいへん優れています。しかし、それをそのまま現地に持ち込んでも全てが消費者に受け入れられるわけではありません。例えばオーストラリアでは、省エネや構造などの優位性をアピールしても、高額になるため住宅購入者にはあまり響きません。結局は価格が最大の決定要因になっているのです。

また、中国においては、購入者が建物の内装工事を行うため、スケルトン方式での分譲が一般的です。内装工事済み方式での分譲を試みている住宅メーカーもありますが、当初は販売に苦戦していました。

それぞれの国には文化、歴史、慣習があり住宅もそれらに根付いているために、住宅メーカーの唱えるコンセプトを理解してもらうためには、多くの時間と労力がかかるのは当然といえます。


そういった状況で、国内のシステムをそのまま現地に取り入れて成功している数少ない例は、セキスイハイムではないでしょうか。

同社はタイにおいて、2009年同国の最大コングロマリット(注:複合企業)であるSCG社と合弁会社を設立しました。2013年には現地工場も完成し、「SCGハイム」のブランド名で日本と同様のユニット住宅を提供しています。同社は多くの顧客を工場見学会に誘致し、組み立てのデモンストレーションとともに高い品質と工期の短さをアピールしています。これが消費者に受け入れられ、受注を順調に伸ばしています。


これからも多くの住宅メーカーが、試行錯誤しながらも海外事業への展開を広げていくでしょう。



実は海外事業以外にも進出している住宅メーカー


実は、住宅メーカーが力を入れている分野は、海外事業だけではありません。

業界1位の大和ハウスがいち早く、1990年代から脱・住宅メーカー化を進めてきたことは業界ではよく知られています。2017年3月期の同社の売上3兆5129億円の内、戸建て住宅の割合はわずか11.1%しかありません。現段階で他のセグメントが9割近くを占めているのです。

同社の他分野への進出はたいへんユニークで、グループ会社はゴルフ場、ホテル、電力小売りからフィットネスクラブまで多岐にわたります。そのなかで、特に興味深いのは、ロボット事業にまで進出しているということです。ロボットスーツ、自動排泄処理ロボット、車椅子補助装置など、主に介護・医療分野向けロボットを扱っています。また、昨年NHKの「クローズアップ現代」で放送された「癒し系アザラシ型ロボット・パロ」を販売しているのも、なんと大和ハウスグループなのです。

業界第2位の積水ハウスも2017年1月期の売上2兆269億円の内、戸建て住宅の割合は18.9%で、他のセグメントの割合を着実に増やしています。特に、都市再開発事業は同社の得意とする分野で、あまり知られていませんが東京ミッドタウン、グランフロント大阪などの大型開発にも関わっています。

他社も上記2社と同様、国内戸建て住宅事業以外の分野への展開を急いでいます。




セラピー用アザラシ型ロボット「パロ」(画像=大和ハウス ニュースリリースより)



今後も住宅メーカー各社は、戸建住宅を重要なコア事業と位置付けながらも、国内外において住関連の分野を中心に、より多角的に事業を展開していくと予測しています。それは単なる器としての建物を提供するだけではなく、人々の生活にとってより良い「住まい方」「暮らし方」、更には「生き方」を提案するということに繋がっていくのではないでしょうか。

そのような意味でも今後の各社の動向に注目していきたいと思います。


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