2017年06月15日
橋本 秋人

空き家流通促進なるか?仲介手数料上限緩和は是か非か

橋本 秋人

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今月4日、国土交通省が空き家の不動産取引に関して、仲介手数料の上限規制を緩和する方向で検討に入ったことが分かった。物件価格が低い地方の空き家などは、不動産業者の報酬である仲介手数料も低い。今回の規制緩和も、この地方の空き家の売買活発化を狙ってのもの。では、仲介手数料の上限緩和は、空き家売買の促進につながるのだろうか。空き家不動産の取引に詳しいFPオフィス ノーサイド 橋本秋人代表に聞いた(スマイスターMagaZine編集部)。



(画像=写真AC)


売りたくても売れない地方の空き家


地方にある相続した実家を売りに出しているが、なかなか売れなくて困っているという相談が増えてきました。中には、売りに出して5年経ってもまだ買い手がつかないというような話も耳にします。
不動産会社に連絡をしても、「努力している」との返事ばかりで一向に売れる気配もなく、売主の不満は自ずと不動産会社の仕事ぶりに向けられています。

しかし、不動産会社の努力に限らず、地方の空き家は売却が困難なものが少なからずあります。人口減少により、周辺に買い手が少なく、中古住宅の売買ががほとんど行われていない地域もあるのです。また、空き家は建物の傷みが進んでいることが多く、瑕疵も分かりづらいため、買い主が見つかっても引渡し後の苦情が気になります。
さらに空き家は残置物の処分など煩雑な業務も多く、古い物件では敷地境界が不明確でその確定に労力が費やされることも少なくありません。

これらに加えて、もし売買が成立したとしても、法定仲介手数だけでは利益にならないという現実があります。



現行の仲介手数料は、不動産業者の意欲を阻害する報酬システム!?

不動産仲介手数料は、国土交通大臣によって上限が定められています。

[表]依頼者の一方から受領できる報酬額の限度(消費税別)

物件の価格

基本の率

200万円以下の部分

100分の5

200万円を超え400万円以下の部分

100分の4

400万円を超える部分

100分の3


一般に仲介手数料は
(物件価格×3%+6万円)×1.08(消費税:課税業者の場合)
という式で計算されます。これは[表]を速算式で表し消費税を加算したものです。(ただし物件価格が400万円未満の場合は使えません)

例えば300万円の空き家を仲介した場合、片方から受け取る報酬額は、
(200万円×5%+100万円×4%)×1.08=15.12万円
双方から報酬を得る場合でも 15.12万円×2=30.24万円
と、わずか30万円ほどにしかなりません。※ちなみに3,000万円の物件の場合は、片方からの報酬でも103.68万円になり、両方からでは200万円を超えます。

地方には驚く程に低額な物件も多く、数百万円で売れるならまだ良い方です。なかには、100万円未満の空き家物件も珍しくありません。不動産会社も都市部の高額物件を扱う旨味を知っていると、あえて地方で、苦労が多い割に報酬も安い物件には力が入らなくなるのは当然かもしれません。

また、大手なら安心ということで大手不動産会社に依頼をしたがる売主も多いのですが、大手業者は営業拠点が都市部に多いため、中小業者と比較しても1件当たりの成約価格が大きく、平均成約価格が5,000万円(仲介手数料168.48万円)を超えている仲介業者も少なくありません。
高額の不動産でも低額の不動産でも広告費や販売の労力は同じようにかかり、かえって高額物件の方が成約しやすいという事実があり、特に大手不動産会社は高額物件に販売活動を注力する傾向にあります。


仲介手数料はいつできた?


ところで現在の仲介手数料の水準はいつ定められたのでしょうか。
調べてみると、宅地建物取引業法は、かの田中角栄元首相らによる議員立法として成立、昭和27年に施行されています。同時に報酬額(仲介手数料)についても定められ、その後昭和45年に現在の上限額に変更されました。つまり最後に上限額が決められてから現在まで46年もの間、その水準は変わらずに続いてきたのです。

1990年をピークに下がり続けた地価は、直近は上昇も見られるとはいえ、今後世帯数の減少の影響により需給バランスはさらに崩れ、長期的には下落が続くことが予測されます。物件価格の下落により不動産業者の仲介手数料も影響を受けることになれば、ますます低額物件に対する不動産会社の姿勢は後ろ向きなものになるでしょう。


今回の告示改正の検討内容にある問題点


今回報じられた国土交通省の仲介手数料の上限緩和案は、報酬の増額を認めることにより不動産業者の意欲を向上させ、低額の空き家物件の取引を活性化させることに狙いがあります。
その内容は、400万円以下の空き家取引を対象に、現状調査等の必要経費を空き家の所有者(売主)との仲介手数料の上限に上乗せできるというものです。但し仲介手数料との合計額は18万円以下にする方向で調整を進めているようです。
そこで現在の改正案による仲介手数料を計算してみましょう。

①成約価格200万円の場合
[現行]仲介手数料200万円×5%=10万円
[変更案]仲介手数料200万円×5%=10万円
上乗せできる経費8万円  
合計18万円(税別)
不動産業者の報酬は8万円増加します。

②ところが成約金額が390万円の場合は
[現行]仲介手数料200万円×5%+190万円×4%=17.6万円
上乗せできる経費0.4万円
合計18万円(税別)

この場合、不動産業者が上乗せできる額はわずか4,000円でしかなく、しかも合計額は200万円の物件の報酬額と同額となり、とても妥当な経費とは思えません。

また①の8万円という上乗せ額についても、空き家特有の業務の煩雑さを考慮すると、内容によっては決して満足できる金額にならない場合もあると思われます。

今回の改正内容では果たして中古の空き家の取引が活発になるのか疑問が生じてしまいます。




(画像=写真AC)



私が考える施策はこれだ!!


報酬面でのインセンティブを示すには、もっと踏み込んだ施策を行っても良いのではと考えます。
例えば、別の付加価値をつけて報酬を上げる方法です。
空き家の所有者にとって、空き家を維持するためのコストは大きな負担です。毎年の固定資産税や、光熱費、除草・剪定(せんてい)の費用、修繕費、火災保険料から交通費まで含めると、年間数十万円の出費になることも少なくありません。また防犯、防災の心配、近隣からの苦情等に対する心理的コストも重くのしかかってきます。
そうなると売却希望の所有者にとっては売却時のコストの問題よりも、売却の可否自体が大きな問題なのです。たとえ売却額が低くても売却経費がかかっても、売却できたことによりその後のコストから解放されるという事実はそれらを超える大きなメリットがあります。

そこで、不動産業者が少しでも空き家を売りやすくするために行う調査やアドバイスも、それに見合う「コンサルタントフィー」を得ることにより実施しやすくなり、その結果早期の売却に結びつくケースも増えるのではないでしょうか。適正な上乗せ額は、一様に上限を定めるものでなく、目的を果たすための手段として内容に見合う報酬額であるべきと考えます。

またアメリカでは、一般的に仲介手数料(6%)は売主が負担し、買主は負担しません。
日本においても仲介手数料の負担を売主のみにすることにより、買主の初期費用を抑え、買いやすくすることを検討しても良いのではと考えます。

地方の中古空き家の流通を後押しするためには、地方そのものの活性化など別のアプローチも必要ですが、今回は目的と効果を見誤らず有効な内容の改正になることを期待しています。


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