2017年05月25日
浅井佐知子

金融庁もベタ褒め!地銀のホープ、スルガ銀行を解説

浅井佐知子

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地方経済の冷え込みや、長らく続く低金利政策の影響で地方銀行(地銀)が窮地にある。
金融庁の森信親長官は就任以来、積極的な発信を続けており合併による体力強化や、地域経済への融資にこだわらないビジネスモデルへの転換を促している。

そんな中、注目が高まっているのが、個人向け不動産取得資金融資の市場を開拓し、収益を伸ばしているスルガ銀行だ。
森長官は今月10日に都内で行われた講演で、同行を「大きくなることが唯一の解決策ではない」と、高く評価したという。ロイター通信などが報じている。呼応するように今月21日付けの日経新聞は社説で「スルガ銀行のように戦略を工夫することで連続最高益を計上する地銀も出てきている。業界内では再編や大胆な提携が増えてきた。あらゆる選択肢を視野に、生き残りの方策を模索する時期だ。」
と、人口減時代に適応するため、いち早く変化した同行に好意的に触れている。

注目が高まっているスルガ銀行について、不動産鑑定士で投資家向けのコンサルティングにも豊富な実績を持つ浅井佐知子代表に解説してもらう。(スマイスターMagaZine編集部)



日本橋スルガビル (写真=スマイスターMagaZine編集部撮影)


不動産関係者でスルガ銀行を知らない人はいない


スルガ銀行は本店が静岡県沼津市にあり、従業員数は1567名(2017年5月現在)。貸出金残高は約3.2兆円なので地銀としては中堅の規模です。しかし、利益率が高く、平成29年3月の連結経常利益は約580億円と、地銀の経常利益ランキングではトップ10内に位置しています。


同行が発表した2017年3月期連結決算には
「個人ローンの貸出金残高が順調に伸び、利回りも上昇したことなどを受けて経常利益は前年同期比3.2%増の582億2,200万円、純利益は16.0%増の426億2,700万円で、いずれも5期連続で最高益となった。」との一節があり、個人ローンが成長を牽引したのがわかります。

同行の米山明広社長は「パーソナルローンをはじめ、多様な顧客ニーズに応えた結果」と述べ、個人向けの貸し付けを主力にする独自の路線には、大きな手応えを持っているようです。

では、スルガ銀行の好調の要因とされる、個人ローンやパーソナルローンというものはどういった商品なのでしょうか。パーソナルローンというのは、目的を持たずして借りられるローンのことです。同行だけでなく、どの銀行でも取り扱っている無担保のカードローンなどが含まれます。

実は、このパーソナルローンを通じて、スルガ銀行は不動産業者と不動産投資家の間では、知らない人がいないと言っていいほど有名な銀行です。なぜならこのローンが収益物件の購入資金として積極的に使われているからです。有担保パーソナルローンと関係者に呼ばれ、上場企業勤務の会社員など属性の良い個人向けに貸し付けられているのです。

ここ数年の不動産投資市場の拡大もあり、好調な業績につながっています。不動産サービス大手CBRE(東京都千代田区)から、「2017年1~3月の国内不動産投資額は1兆3,540億円と前年同期比で51%も増えた。」という調査結果が出ています。世界的に低金利の状態が長期化しているのを背景に、安定した賃料が見込める日本の不動産に投資マネーが流入したことが市場拡大の原因だとしています。

海外マネーの流入で日本国内の不動産投資市場が活況であることが、スルガ銀行の躍進につながったのかは後述いたします。



スルガ銀行が選ばれる理由


成長を牽引するパーソナルローンですが、このマイナス金利の日本で4.5%もの高金利で貸し出せているという面でも有名です。なぜ投資家が高金利のローンをわざわざ使うのか、不思議に思う方も多いと思います。同商品がなぜ選ばれるのか、その特徴を紹介したいと思います。



融資回答が他行に比べて早い


最初に挙げられるのは、融資できるかどうかの回答が、他行に比べて早いことです。融資回答が早いことがなぜ投資家にとって重要なのかは、現況の不動産投資市場と大きく関係があります。投資熱が高まっている現在は、利回りが高く優良な物件は、売却の情報が出た途端に決まってしまう場合が多いです。そのため投資家は、現地を見ずに、すぐに「買付証明書」を入れます。

それでも、人気の物件には一瞬にして5番手までも、購入希望者がついてしまう状況です。「買付証明書」を出したからといって、購入できるわけではありません。物件が手に入るまでには、銀行から融資を受ける必要があるからです。契約をした後、金融機関と「金銭消費貸借契約」を結び、それから残金決済と言う流れになります。そして、この間、1か月、長くて2ヶ月近くかかる場合もあります。

しかも、融資が通らない場合もあり、その時は「ローン特約条項」と言う特約が普通は「契約書」に含まれています。これは、もしローンが通らなければ、ペナルティーなしで契約を解除でき、契約時に売主に支払った「手付金」は、戻ってくるというものです。売主としては、できるだけ早く融資の回答が出るほうがありがたいのです。「買付証明書」を出した順ではなく、「融資が通った順」に売却がきまる物件もあります。そういう時に、回答が早いスルガ銀行が買い主、売主ともに有利となります。

不動産会社が「融資先はこちらでご紹介します」として、スルガ銀行を紹介するケースもあります。



独自の審査ノウハウで他行が尻込みする物件にも融資


2つ目のメリットは、「融資期間が長い」ことです。


お金を借りて不動産投資をする場合、手元のキャッシュに影響を与える項目は、


1.金利

2.融資期間
です。


金利が高くても融資期間が長ければ、それなりに手元にキャッシュが残ります。これは実際シミュレーションをすればすぐに分かります。

金利の低い都市銀行などは、建物の「税務上の耐用年数」と融資期間が一致しています。RC造の建物であれば、耐用年数は47年と決まっています。ちなみに、スルガ銀行はRC造しか融資しません。築30年のRC造中古物件を購入しようと思った場合、融資期間は、47年-30年=17年となります。17年間で完済するため、当然、毎月の返済金額が大きくなります。しかし、スルガ銀行の場合は、こうした物件でも30年以上の融資が可能です。それだけ投資家にとっては有利なのです。

ではなぜ同行だけが、融資できるのか。実は、融資期間も含めてローン契約にともなう審査は銀行内で決まるので、なぜ可能なのかは分かりません。独自のノウハウを持っていることだけは、間違いありません。

さらに、スルガ銀行の融資の対象となる地域は広範囲で、ほぼ全国に対応しています。他行は、支店がある地域や、首都圏と大規模(100万人以上の)な地方都市などに限定しています。唯一「日本政策金融公庫」も全国に対応していますが、融資枠が小さいことと、今年4月からは物件総額の半分以上の頭金が必要など、厳しい条件となりました。スルガ銀行はフルローンも可能です。

もうひとつ大きな特徴を上げておくと、スルガ銀行の融資対象となる人の属性はほとんど「会社員」に限られています。優良企業の会社員以外は、よほど資産を持っている地主さんや優良企業のオーナー以外は、自営業には融資をしないということを徹底しています。つまり、「限られた優良な顧客にだけ特化したローン商品といえます。



(写真=スマイスターMagaZine編集部撮影)


スルガ銀行を使う時の問題 高い金利と出口戦略の難しさ


上記にもあるように、スルガ銀行はとにかく金利が高いです。最近は、物件と属性によっては3%台で貸し出す場合もあるようですが、通常は4.5%で貸し出しているようです。その代わり、融資先を見つけるのが大変な地方の投資物件にも貸し出すのですが、これはとても大きなリスクをはらんでいます。

以前のように市場の投資熱が低く、競争相手が少ない時は物件価格も安く、利回りが15~20%以上出るということもありました。その時期であれば、金利4.5%、融資期間30年で借りても、それなりに運営できます。しかし、不動産投資市場がヒートアップしている現在では、フルローンで、利回り9%、金利4.5%、融資期間30年などのローン条件で購入すると、よほどうまくやらない限り収益をあげ続けるのは難しいと思います。



スルガ銀行は最後の「貸し手」


もう一つの懸念しているのは、スルガ銀行を使って購入した物件は、売却が難しいと言われていることです。

なぜでしょう?

それは、次の購入者に融資をしてくれる銀行がない、つまり「誰も買えない」状況になりうるからです。先ほどの通り、スルガ銀行は独自の審査基準などで、他の銀行が避けるような物件の購入資金も融資してくれます。しかし、そうして手に入れた物件を売却しようとしても、他行で融資がつかないため、売却して利益を確定できなくなるのです。特に地方中古のRC造マンションを購入した場合など、地元の地銀か信用金庫が貸してくれればいいですが、貸してくれない場合は、八方ふさがりになります。

こうした事情から、投資家の間では、スルガ銀行は「最後の貸し手」と言われています。最後の貸し手を使ってしまうと、未来の選択肢が大幅に狭められてしまうのです。



スルガ銀行でローンを組んだ人の事例


では私が今までお会いした中で、スルガ銀行を使ったおかげで大変な目に合っている方の例をお話ししたいと思います。全ての方に当てはまる実例ではありませんが、安易に高金利の融資を受けると起きうる実例として、ご紹介します。

その方は40代後半のサラリーマンです。会社は1部上場の大手企業。子供が二人いて、30代後半で生まれたお子さんなので、定年を迎えるときでも子供はまだ学生。お金がかかり、自分たちの老後のことを考えると不安。という理由で不動産投資を始めたそうです。

一昨年から投資をはじめて、既に3棟も購入されています。購入した場所は、北海道、関西、そして九州です。いずれも築30年近い中古のRC造マンションで、そのうち北海道の物件と九州の物件の融資先がスルガ銀行でした。融資期間は30年、金利4.5%、利回り8%~9%。フルローンで購入しています。

無料の投資セミナーになんとなく参加し、セミナー終了後、その場で紹介された物件に買い付けを入れてしまったそうです。物件には融資先としてスルガ銀行がセットで付いていました。すでに購入して1~2年経ちますが、手残りは何とか黒字を維持しています。でも、築30年近く経っている物件なので、今後はリフォーム費用が掛かってきますし、空室が増えれば赤字に転落します。近い将来のマイナスは、目に見えているのです。

「3件のうち、どこか1件を売却し返済額を減らしましょう」とアドバイスをしましたが、実際に調べてみると、次の買い手の融資先が見つからないのです。

結局この方は、売るに売れず、かといって違う銀行への借り換えもできません。先述のとおり、融資期間が短くなり赤字になってしまうためです。

 

スルガ銀行を上手く活用した例も紹介しておきます。

ある不動産投資家の話です。その方は、ある理由でキャンセルになってしまった物件を、「赤字覚悟で売却してもいいから、すぐに売りたい」という情報が不動産会社から入り、購入したそうです。購入の条件は、融資先としてスルガ銀行を使うということでした。ローン決済までの期間が短いから、という理由です。この投資家も一部上場の会社員で、融資先の属性的には問題なく、物件も良かったので即契約しました。そして、わずか1週間後に残金決済と言う超スピードで購入をすすめたのです。この投資家が凄いのは、引き渡しからわずか1か月後に、もっと金利の低い銀行に借り換えを実行したのです。金利は4.5%から1%台まで下がりました。このことで、かなりの利回りが計算できる投資となりました。

この例は、スルガ銀行の審査の早さを活用した、うまいやり方です。ただしこの方法は、他のみなさんにはお勧めしません。おそらくは、もう二度とスルガ銀行を利用できないし、やはり契約から1ヶ月後の借り換えは、多くの方に迷惑をかけます。なにより上手く借り換えができない時のリスクが高すぎるからです。


まとめとして、スルガ銀行は個人向けの不動産購入融資で伸びており、その特徴として

・融資回答が早い

・融資期間が長い

・融資対象が日本全国


などの利点があります。


でも、金利が高いので、利回りの低い物件の購入で融資を受けると、投資そのものがマイナスになり、失敗する可能性があります。

スルガ銀行に限りませんが、不動産投資で失敗しないためには、

・リフォーム計画などシミュレーションをきっちりとすること

・ある程度の頭金を用意すること

・賃貸が成り立つ地域なのかどうかを十分に調べること


が大切です。


 スルガ銀行が投資市場のニーズをつかんで、躍進したのは間違いありません。しかしながら、融資が下りやすい、使いやすいという点にだけ注目していると思わぬ結果を招くこともあります。これは、長期的な視点が必要な不動産投資全般に言えることでもあります。そういった意味ではスルガ銀行は不動産投資家にとって、不動産投資への習熟度を試される存在といえるでしょう。


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